本田宗一郎のことば

社会に通用するものを身につけよう

(1969.S44.4 社報 本田宗一郎)

 ぼくはここではっきり宣言するけれど、ホンダは絶対につぶれない、安心だ、と思ったら大間違いだよ。うちだって、つぶれることもあると思う。入った者がよくなければ、会社はつぶれるに決まっている。だから、絶対つぶれないということはあり得ない。自分のためにほんとうに一生懸命働いておれば、人にうやまわれるところの技術を持ち、またうやまわれるところの行ないをしているなら、何もホンダにばかりいなくてもいい。どこでも高く買ってくれるだろうと思う。

 ぼくが昔、自動車の修理をやめてピストンリングの製造を始めたとき、続けて修理をやりたいと思う人は、おれが世話をしてやるから、と言ってほうぼうに電話をかけた。そうしたら、ホンダのところで勤めた者なら私のところへくれと、たちまちのうちに一人の婿に五人も十人も嫁さんがついたような勘定になった。うちよりずうっと高い給料で、しかも、いい地位でみんな迎えられていった。

 かりにホンダがつぶれるときがあっても、自分というものをほんとうに磨いてあるなら、どこへいっても高く評価されるんだから、結局自分のために働きなさいと申し上げる。

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