本田宗一郎のことば

レーサーは商品の尖兵

(1964.S39.5 社報 本田宗一郎)

 

 

 レースはやはりやらなきゃならない。レースによって、自分の力量や技術水準が世界のどのくらいにあるかを知ることができるし、それによって、経営の基盤をどこに置いたらよいかを決めることができるんだからね。

 

 レースにでて、そりゃあ、勝つにこしたことはないけれども、勝っても伸びない会社がある。レースに力を入れて、勝負ばかり追っていると、商売がおろそかになってしまう。一度勝っていろいろな経験をしたら、商売に力を入れる。そのような会社が隆々と伸びていることを我われは知らなければいけない。

 

 乗り物は、一つ間違えると生命にかかわることだってある。こういう交通機関を作っている我われは、レースを通じて得られた結果を、早く製品に取り入れて、より安全な交通機関をお客さんに提供する義務がある。

 

 より社会に貢献できるものを作ることに全力を挙げるのが我われの大切な使命である。レーサーは製品の尖兵なんで、レーサーと製品とは、いわば往復運動をやっているんだね。

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