本田宗一郎のことば

明日への課題

(1971.S46.9 スズカ弘報 本田宗一郎)

 今は、昔の二宮金次郎のように、ただ働いていればよいという時代ではない。働くことも楽しい、遊ぶことも楽しい、というのが人間にとって最高のものであろう。これはまた、創造していくものだ。ここにアイデアが必要となってくる。昔の命令の時代から、今は自分で考えるという時代に変わってきている。人間の頭脳には四百五十万個のトランジスターが入っているという。問題はこのコネクションであり、このコネクションがどうなっているかで、その個人の特性が決まってくるのだ。さらにこの回路をいかにつなぐかは自分自身で考えるべきで、そこにこそ、人間の価値が生じてくるのである。アイデアを出す……そこからものを作ること……これは人間にとっては運命的なものである。避けないで解決していくことこそ、重要なことである。皆さんの改善提案二十万件達成は、世界のどこへいってもないであろう。ドイツ、アメリカを探しまわっても、また、しかり。何と素晴らしいことだ。わが社が資本金百万円でスタートして、今日の地位があるのも、このアイデアのおかげである。

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