本田宗一郎のことば

レクリエーションのありかた

(1969.S44.1 社報 本田宗一郎)

 世の中へ生まれたときは、働き虫で生まれたんじゃない。やっぱり何か楽しみたいんですね。ほんとうから言えば、俺は楽しみたいから、その楽しむための時間と金がほしいんだよ。それだから一生懸命働いたんだ。

 だから、いちばん大事なことは楽しむことなんです。楽しむと言っても、金だけあっても楽しめない。時間というものがなければならない。

 だから、そこで能率というものを上げれば、時間と金と両方とも得られる。

 能率とは、短時間のうちにたくさんの量を上げることなんですね。時間が延びてたくさん上げても、これは能率じゃない。

 要するに、能率を上げるとか、働くとかいう問題は、自分の楽しいという目的があるからやるんだということなんです。

 だから、よく、勤めにでる人で「ストがあっても日曜だからよかったね」と言う人がいるんですが、俺は、日曜だからストをやっちゃ困ると思うんです。日曜が楽しみで一生懸命働いているのに、その日曜にストをやられ、足を奪われたら、遊びにいけない。ここがいちばん大事なところなんです。

 だから、俺はみんなと反対だと言われるけれども。

 それでは、いまはどうだと言えば、働くことが好きなんです。

 というのは、そうやっているうちに働くことに興味を覚えて、これがレクリエーションになっちゃった、ということなんだ。

 レクリエーションをばかにするやつはどうかしている。ほんとうに働く気のある人はレクリエーションをばかにしない。それが楽しみなんです。しょっちゅう遊んでいるやつは、遊びが遊びじゃなくなる。働いているから、反対のもののレクリエーションが非常に有効になってくる。しょっちゅう遊んでいるやつは、遊ぶことが仕事だもの、怠けることが仕事なので感動もなければなんにもない。

 だから、まじめに働く人は、レクリエーションは、大事な、いちばん重要な、仕事よりも大事なことだと思う。

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