本田宗一郎のことば

世界人としての行動を

(1969.S44.4 社報 本田宗一郎)

 日本という国は、ご承知のように、資源は何もない。石炭にしても、少しはあるが質が悪い。工業の基礎となる鉄を溶かすには不適当で、輸入している。鉄は申すにおよばず、あらゆる原料を外国から輸入している。輸入した原料を我われは、頭脳と労働力によって、加工して商品にする。そして世界に送りだし、それで飯を食っていかなければならない、という運命を背負っていることを忘れてはならない。

 そのためには、どこの国とも仲よくしなければいけない。自由諸国との関係を断ち切ってしまったら、日本は生きていかれない。

 輸出というものは、国家が安定していなければできない。いくら個人が立派であっても、国が払ってくれるかどうか分からなければ、原料だって入ってこないし、売ってくれないし、また買ってもくれない。国内の商取り引きとは全然違っている。

 輸出というのは、国の信用、国の秩序というものが土台になって、我われの商売ができ上がっているということを、まず認識してもらいたい。

 君達は、もうすでに我われの会社に入ってしまった以上は、今までの日本人じゃない!ということを考えてもらいたいと思う。

 世界人としての行ないをしてもらいたい!

 世界人として誇れるホンダマンになることが、今まで営々として、今日のホンダを築いてきた先輩に対する礼儀でもあるし、またこれから君達がだんだん上になって、新しく入ってくる人たちの尊敬の的にもなることである。

 君達は尊敬される先輩になってもらいたい。

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