藤澤武夫のことば

禍いを転じて福とする

1969.S44 社報特典号 藤澤武夫)


ホンダが今日に至るまでには、いろいろなことがあった。一歩方向を間違えば、倒産してしまうような危機が何度もあった。しかしそういう危機を好機に転換し、幸福をつかんできたのは物の考え方によるのだと思う。


たとえば九月、安全問題について一部のマスコミからは不当なまでに騒がれ、販売には不利な背景にあった。このようなとき、「俺はこの際に、ユーザーを完全につかむんだ」と考えるか、ふらふらしてしまうかによって先々が決まることになるのだ。よいときがあれば悪いときもある。禍いを転じて福とするのは、信念があるかどうかの問題である。そして九月も終盤で底力を示し、Nシリーズはトップの座を譲らなかった。お互いの確固たる信念がそうさせたのだ、と私は判断している。