藤澤武夫のことば

万物流転

(1956.S31.4 社報 藤澤武夫)


私は、今日、やはり万物流転の掟(おきて)が、いつのときには本田技研にもあてはまるときがくるのではないかと思い、これから先永遠に繁栄させるために、どういうことをすればよいのかと考えている。どんな角度から見ても崩れ去ることはあるまい、と自他共に許していた大会社が、この今の企業間の競争の激しさのうちに落後した-堅い経営だと世評にあったものさえ-


いかなる優秀な設備、優秀な人材、巨額な資本金であっても"万里の長城"と同じ運命にならないとは、誰も言えない。


この本田技研を永久に繁栄させるものは、何であろうか。モノ頼みしたり、カネを頼りにしたりする他力本願であっては、絶対に自分を安定させることはできない。自分達一人ひとりが、世界の進歩をよく認識して遅れることのないよう自分達の地位を進めるべく努力する考え方こそ、最も大切なことと思う。